ももたろうさんとであうまで きじへん   作:カトウヒロ吉  絵:都あきこ

ももたろうさんとであうまで
きじへん
作:カトウヒロ吉 絵:都あきこ

むかしむかし あるところに、
びょうきの ははおやと くらす、一わの きじが おりました。
そのきじは、まいにち ははおやの かんびょうを していました。

「おっかあ、おら くいもん とりにいってくるでな、けんけーん。」
そう いって いえを でると、
きじは まず、しんだ ちちおやの おはかまいりを します。

「おっとう、きょうも 一にち
 おっかあを ちゃんと みまもってて くんろ。」

きじは まいにち ちちおやの おはかまいりを
かかすことは ありません。
まいにちまいにち きれいな はなを おそなえして、
ははおやの ことを おいのり していました。

でも きじは、うまれてから いちども
ちちおやの かおを みたことが ありませんでした。

「おっかあ、おっとうは どうして しんだんだ?」
と きじが きいても、
「おとなに なったら おしえてやる。」
と いって、ははおやは いつも
なにも おしえて くれませんでした。

ある日、
きじが いつものように たべものを さがしていると、
むらの ひとたちが うわさばなしを していました。

「あっちゃむらに おにが きて、ぎょうさん わるさ したんだと。」
「こっちゃむらに おにが きて、くいものやら たからもの、
 むらの むすめまで もっていったんだと。」
「つぎは、このむらに くるかも しれねえな。」

たべものを あつめて いえに かえってきた きじは、
そのことを ははおやに はなしました。

「きょう むらの ひとたちが、
 おにが くるかも しれねえって はなししてたべ。」
それを きいた ははおやは、すこし げんきが ありません。

きじは、げんきを だしてもらおうと ははおやに いいました。
「あんしん してくんろ。おにどもが きても
 おらが たたかって、
 おっかあを まもるだ、けんけーん。」

それを きいた ははおやは、
きゅうに おおきな こえで いいました。

「だめだ、だめだ、おにどもと たたかっちゃならねえ!」

きじは あまりの こえの おおきさに、びっくりして ききました。
「おっかあ、きゅうに どうしただ?」
ははおやは、こんどは ちいさな こえで いいました。

「おっとう みたいに なっちまうぞ…。」

きじは すこし おどろいて、ははおやに きいてみました。
「おっかあ、おら、もう おとなだ。
 そろそろ おしえてくれても いいべ。
 おっとうは どうして しんだんだ?」

ははおやは、すこし かんがえてから こたえました。
「おまえの おっとうはな、
 まだ たまごだった おまえを まもるために、
 おにどもと たたかって しんだんだ。」

「おっとうは おらを たすけようと、
 おにどもと たたかって しんだだか。」

ははおやは、しずかに いいました。
「たまごの おめえは たすかったが、
 おっとうは あっと いうまに おにに くわれちまっただ。」

「おっとうは おにどもに ころされたんだべか。
 ちくしょう、おにどもめ!」
その ことばを きいて、ははおやは すこし きつく いいました。
「きじが 一わきりで、
 おにどもを やっつけることなんて できるわけねえんだ!
 だから、おにと たたかうなんて ぜったい いわねえでけろ。
 おめえまで くわれちまったら、
 おら、ひとりっきりに なっちまうだ。」

きじは、その ことばを きいて、
ははおやを かなしませたくないと おもいましたが、
おにどもに ちちおやを ころされたことは、
くやしくて くやしくて しようがありませんでした。

そんな ある日、
とうとう おにどもが むらに やってきました。
おにどもは、つぎから つぎへと
にんげんの いえを せめています。

「おっとう、おっかあを みまもってて くんろ。」
きじは こころのなかで そう おいのり しながら、
ははおやと しずかに かくれていました。

おにどもは、いえを こわしたり
いろんな ものを ぬすんだり、
さんざん あばれたあと、おにがしまへ かえっていきました。

ぶじだった きじは、ちちおやの おはかまいりに いって、
じぶんたちを みまもってくれた おれいを いおうと おもいました。

「おっかあ、おら おっとうの おはかに
 ぶじだった おれいを いってくるだ。」

そう いって おはかの まえまで きた きじは、
ちちおやの おはかを みて、
「けんけーん!」
と なきながら さけびました。

なんと そこには、おおきな おにの あしあとが のこされ、
ちちおやの おはかは ぐちゃぐちゃに つぶされていたのです。

「もう がまんできん!
 おら、おっとうの かたきを うつだ!
 けんけーん!」

きじは、ははおやに いいました。
「すまねえ、おっかあ。どうしても おにどもを ゆるせねえだ。
 おら、おっとうの かたきうちに いく。」

ははおやは いいました。
「そう いうと おもっとっただ。
 だから、おっとうが どうして しんだか いいたく なかっただ。
 どうしても いっちまうだか?」

さびしそうな ははおやの かおをみて、きじは いいました。
「しんぱい しねえでけろ、おら なかまを みつけて、
 そいつらと いっしょに おにどもを やっつける つもりだ。
 おら、かならず げんきに かえってくる。
 ぜったい おっかあを ひとりにはせん! けんけーん!」

そういって、きじは おにたいじの たびに でました。

どうやって なかまを あつめようか、
かんがえながら おにがしまに むかっていると、
ちょうど ももたろうたちを みつけました。

おしまい

桃太郎(ももたろう)さんと出会うまで キジ編 作:カトウヒロ吉 絵:都あきこ


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