

ももたろうさんとであうまで
いぬへん
作:カトウヒロ吉
絵:都あきこ












むかしむかし、三にんの むすめたちが すむ いえが ありました。
父おやと 母おやは、
一ばん目、二ばん目の、むすめたちばかり かわいがり、
いえの しごとは、三ばん目の むすめに、ぜんぶ させていました。




いえには、一ぴきの いぬが いました。
いぬと、三ばん目の むすめは、たいへん なかよしで、
はたけしごとや おつかいに いくときは、いつも いっしょ。
いぬの せわは、ぜんぶ むすめが していました。










ある日、むすめが、せんたくものを かたづけていると、
いぬが、すべって ころんで、
ふたりの あねの きものを、ふんづけてしまいました。
むすめは、もう一ど せんたくして、
きれいにしようと おもいましたが、
ちょうど、ふたりの あねが、それを みていて いいました。
「おめえが、ちゃんと いぬっこを みてねえから、だめなんだ。
おっかあに、いいつけてやるからな。」
母おやは、むすめたちの はなしを きいて、いいました。
「いぬっこの やったことは、おめえの やったこと。
わるいのは、おめえだからな。
ばつとして、きょうも ばんごはん ぬきだ。」
むすめと いぬは、なんだかんだ いわれながら、
いつも、ばんごはんを たべさせて もらえませんでした。




みんなの ばんごはんが おわると、
三ばん目の むすめは、あとかたづけを しなければなりません。
なにも たべていない むすめは、
おなかを ぐうぐういわせながら、あらいものを します。
いぬも、いえの すみで、
おなかを ぐうぐういわせて まるまっていると、
むすめが、いぬに たべものを くれました。
「みんなが のこしたものを あつめたんだ。はら へってるべ。」
いぬは、わんわんと よろこんで、
「はんぶんずつ するべ。」
と、いいましたが、むすめは いいました。
「こんだけしか ねえから、おらは たべねえで がまんする。
おめえも、すこししか ねえけど がまんしてけろ。」
いぬは、くうんくうんと なきながら、ごはんを たべました。









そんな ある日、おにがしまの、こわい おにどもが、
村を せめてきました。
「こめを だせー。しおを だせー。たからものを だせー。
ださねえと くっちまうぞー。」
おにどもは、つぎのいえから つぎのいえへと、
じゅんばんに やってきます。
母おやと むすめたちは、いえの おくの へやに かくれました。



そして とうとう、むすめの いえにも、おにが やってきました。
「こめを だせー。しおを だせー。たからものを だせー。
ださねえと くっちまうぞー。」
いぬは、わんわん ほえながら、おにの 足に かみつきました。
「なんじゃい、この、やせいぬは。
こんなもん、いたくも かゆくも ねえわい。」
おにが ひとけりすると、
いぬは きゃんきゃん いいながら、とばされてしまいました。









父おやは、いえにあった たべものや たからものを、
ぜんぶ だして いいました。
「こ、これで、ぜんぶです。いのちだけは、たすけてくんろ。」
おにどもは いいました。
「これっぽっちじゃ、すくなすぎる。もっと、ぎょうさん だせー。」
「かんべん してくんろ。もう、なんも ねえだ。」
と、父おやが いうと、
「かんべん ならん。
もう、なんも ねえなら、むすめ だせー。」
と、おには いいました。











その こえを きいた、むすめたちは、
おくの へやで ぶるぶる ふるえるばかり。
おにどもは、もう一ど いいました。
「むすめ だせー。この いえに、むすめが いるのは、
においで わかっているんだからな。」
この ことばを きいて、
みんなと かくれていた 三ばん目の むすめは、
「おっかあ、おねえたちは、かくれててくんろ。
おらが いってくるだ。」
といって、おくの へやから でていきました。




むすめは、おにに むかって いいました。
「さあ、おらを つれてってくんろ。」
「むすめは、おめえ ひとりだけか?」
「そうだ。おらを つれていってくんろ。」
おにどもは、むすめを つれて いえを でていきました。










いぬが、はっと 目を さますと、
みんなは、たのしそうに ごはんを たべていました。
ただ、なかよしの むすめだけが いませんでした。
いつまでたっても、かえってこないので、
いぬは、二ばん目の むすめに きくと、
「あいつは、おにに つれてかれたべ。
おにがしまに つれてかれて、もう くわれたんでねえべかな。」
と、いいました。





それを きいた いぬは、
なかよしだった むすめを たすけようと、
おにがしまにむけて、いえを とびだしました。
いっしょうけんめい はしりつづけましたが、
たべものを もらえなかった いぬは、
おなかが へって、すぐに あるけなくなってしまいました。
ちょうど そこで、ももたろうを みつけました。
おしまい
桃太郎(ももたろう)さんと出会うまで 犬編 作:カトウヒロ吉 絵:都あきこ

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