

しらゆきひめ(白雪姫) 文:カトウヒロ吉 絵:二木舞羽 作:グリム






               むかしむかし、ちらちらと ゆきが ふる、ある ふゆの日。
               おきさきさまは、まどべに すわり ゆきを みながら おもいました。
               
               「この ゆきの ように はだが 白くて、まっかな くちびるで、
                くろかみの 子どもが うまれますように。」
             

               やがて おきさきさまは、女の子を うみました。
               女の子は、ゆきの ように 白い はだだったので、
               『しらゆきひめ』と よばれました。
               しかし、おきさきさまは この 子を うんで すぐに 
               なくなって しまいました。
             
               一ねんご、王さまは あたらしい おきさきを むかえました。
               あたらしい おきさきは、みためは うつくしい ひとでしたが、
               こころは みにくくて わがままでした。
               
               おきさきは、ふしぎな まほうの かがみを もっていました。
               「かがみよ、かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               おきさきが かがみに たずねると、かがみが こたえました。
               「おきさきさま、この くにで、一ばん うつくしいのは あなたです。」
               それを きくと、おきさきは いつも あんしんしました。
               なぜなら かがみは うそを つかないからです。
             


               しらゆきひめは、すくすく そだち、
               それはそれは うつくしい むすめに なりました。
               
               ある日、いつものように おきさきは かがみに たずねました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「おきさきさま、ここでは、あなたが 一ばん うつくしい。
                でも、しらゆきひめは、あなたの なんばいも うつくしい。」
               かがみの ことばを きいて、おきさきは おどろきました。
               かがみは うそを つかないからです。
             

               おきさきは、かんかんになって おこり、
               かりゅうどを よんで いいました。
               「しらゆきひめを もりに つれていって、ころして おしまい。」
               
               かりゅうどは、しらゆきひめを もりに つれていきました。
               しかし、どうしても しらゆきひめを ころすことが できません。
               かりゅうどは、しらゆきひめに いいました。
               「しらゆきひめ、どうか にげてください。
                にどと おしろには もどって こないでください。」
               しらゆきひめは、もりの おくへ おくへと、はしって にげていきました。
             
               かわいそうな しらゆきひめは、もりの なかで ひとりぼっち。
               「もう おしろに かえれない。よるに なったら、
                どこで ねむればいいの?」
               しらゆきひめは、なきながら あるきました。
               
               あたりが くらくなるころ、
               もりの おくに 小さな いえが みえてきました。
               しらゆきひめは、その いえで やすませて もらおうと おもいました。
             

               いえの なかは、なにもかもが 小さく できていました。
               
               テーブルには 七まいの おさらが のっています。
               七つの 小さな スプーン、七つの 小さな ナイフと 小さな フォーク。
               かべぎわには、七つの 小さな ベッドが ならんでいます。
               
               しらゆきひめは、とても おなかが すいていたので、
               七つの おさらから すこしずつ やさいと パンを とって たべました。
               一つの おさらを ぜんぶ たべて、
               からっぽに してしまうのは いやだったのです。
               そして、ベッドに よこになると、
               とても つかれていた しらゆきひめは、
               ぐっすりと ねむりこんで しまいました。
             



               やがて、この いえに すむ、七にんの こびとたちが しごとから 
               かえってきました。こびとたちが 七つの あかりを ともすと、
               いえの なかが あかるく なりました。そして、いえの なかの 
               ようすが、なんとなく ちがうのが わかりました。
               「ぼくの いすに すわったのは だれ?」
               「ぼくの ごちそうを たべたのは だれ?」
               「ぼくの やさいを たべたのは だれ?」
               「ぼくの パンを たべたのは だれ?」
               「ぼくの フォークを つかったのは だれ?」
               「ぼくの ナイフを つかったのは だれ?」
               「ぼくの コップで のんだのは だれ?」
               こびと たちは くちぐちに いいました。
               「しーっ、ベッドで だれか ねているぞ!」
               こびとたちが 七つの あかりで ベッドを てらすと、
               しらゆきひめが すやすやと ねています。
               「なんて かわいいのだろう。なんて うつくしい 子だろう。」
               こびとたちは、しらゆきひめを おこさないで
               そっと ねかせておくことに しました。
             




               つぎの日、しらゆきひめは めを さますと、
               七にんの こびとたちを みて びっくり しましたが、
               こびとたちは やさしく いいました。
               「ねえ、きみは なんていうの?」
               「わたしは、しらゆきひめ。」
               「どうして、ぼくたちの いえに やってきたの?」
               しらゆきひめは、おきさきが ころそうとしたことや、
               かりゅうどに たすけて もらったこと、
               もりの なかを はしって にげてきたことなど、
               こびとたちに ぜんぶ はなしました。
               しらゆきひめの はなしを きいた こびとたちは いいました。
               「きみが、ごはんを つくったり、
                そうじや せんたくを してくれるのなら、
                ずっと ここに いても いいよ。」
               こうして、しらゆきひめは 
               こびとたちと くらすことに なりました。
             

               こびとたちは、やまで 
               きんや ほうせきを さがす しごとを していました。
               こびとたちは、まいあさ やまへ でかけ、
               ゆうがたに なると かえってきます。
               
               しらゆきひめは、しょくじの したくや、
               そうじや せんたくの まいにちが、たのしくて しょうがありません。
               でも、ひるまは いえに ひとりぼっち。
               しんせつな こびとたちは、しらゆきひめに いいました。
               「わるい おきさきに きをつけるんだよ。
                きみが ここに いることは、きっと わかってしまうから。
                だれも いえの なかに いれちゃ だめだよ。」
             


               さて、おしろでは、おきさきが いつものように 
               かがみに むかって たずねていました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「おきさきさま、ここでは あなたが 一ばん うつくしい。
                でも、もりの なかで 七にんの こびとと くらす 
                しらゆきひめは、あなたの なんばいも うつくしい。」
               おきさきは たいへん おどろきました。
               かがみは うそを つかないと しっていたからです。
               「しらゆきひめが、いきていたなんて。
                もう だれにも たのまない。わたしが このてで ころしてやる。」
             




               おきさきは、みにくい けしょうをして、
               ものうりの おばあさんに ばけました。
               
               こびとたちの いえに つくと、とを たたいて いいました。
               「いらんかね? いらんかね? すてきな しなじゃよ。」
               しらゆきひめは、まどから かおを だしました。
               「こんにちは おばあさん。なにを うっているの?」
               「きれいな もの ばかりだよ。
                ほれ、この うつくしい ひもは いらんかね?」
               おばあさんは、いろとりどりの きれいな ひもを みせました。
               やさしそうな おばあさん だったので、
               しらゆきひめは とびらをあけて ひもを かうことにしました。
             


               「どうれ、ちゃんと むすんで あげるよ。」
               おばあさんは そういって、
               しらゆきひめの くびに ひもを まきつけて、
               ちからいっぱい しめました。
               
               しらゆきひめは いきが できなくなり、
               しんだように たおれてしまいました。
               
               「さあ これで、一ばん うつくしいのは わたしだよ。」
               そういって、おばあさんは かえっていきました。
             




               ゆうがたになって、こびとたちが しごとから かえってくると、
               しらゆきひめが ゆかに たおれています。
               おどろいて しらゆきひめを だきおこすと、
               くびに きつく ひもが まきついているのを みつけました。
               こびとたちが いそいで ひもを きると、
               しらゆきひめは なんとか いきかえる ことが できました。
               「その ものうりの おばあさんは、きっと わるい おきさきだ。
                きをつけるんだよ。ぼくたちが いないときは、
                だれも いえに いれちゃ だめだよ。」
               おしろでは、おきさきが いつものように 
               かがみに むかって たずねていました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「おきさきさま、ここでは あなたが 一ばん うつくしい。
                でも、もりの なかで 七にんの こびとと くらす しらゆきひめは、
                あなたの なんばいも うつくしい。」
               おきさきは たいへん おどろきました。
               しらゆきひめが まだ いきていると わかったからです。
             

               おきさきは、こんどは どくのある くしを よういしました。
               おきさきは まほうを つかえたのです。
               このまえとは ちがう おばあさんに へんそうして、
               こびとたちの いえに やってきました。
               「いらんかね? いらんかね? すてきな しなじゃよ。」
               「かえってください。だれも いえには いれてあげられないの。」
               「ちょっと みるくらい いいじゃないか。」
               おばあさんは そういって、しらゆきひめに くしを みせました。
               しらゆきひめは、そのくしを とても きにいったので、
               とを あけて くしを かうことに しました。
               「それじゃあ、わたしが このくしで、かみを とかして あげようね。」
               くしが しらゆきひめの かみに はいったとたん、
               どくが きいて、しらゆきひめは ばったりと たおれてしまいました。
               「さあ これで、こんどこそ 一ばん うつくしいのは わたしだよ。」
               そういって、おばあさんは かえっていきました。
             

               ゆうがたになって、こびとたちが しごとから かえってくると、
               しらゆきひめが しんだように たおれています。
               きっと わるい おきさきの しわざです。こびとたちは どくの くしを 
               みつけて、かみのけから ひきぬくと、
               しらゆきひめは いきを ふきかえしました。
               
               こびとたちは、もういちど しらゆきひめに いいました。
               「きをつけるんだよ。ぜったいに、だれも いえに いれちゃ だめだよ。」
               
               おしろでは、おきさきが かがみに むかって たずねていました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「おきさきさま、ここでは あなたが 一ばん うつくしい。
                でも、もりの なかで 七にんの こびとと くらす しらゆきひめは、
                あなたの なんばいも うつくしい。」
             
               おきさきは もう がまんが できません。
               あまりの いかりに、はらわたが にえくりかえるほどです。
               「こんどこそ、ぜったいに しらゆきひめを ころしてやる。」
               おきさきは、ひみつの へやで どくりんごを つくりました。
               みためは たいへん おいしそうな りんごですが、
               一くち たべたら、あっというまに しんでしまいます。
               おきさきは いなかの おばあさんに ばけて、
               こびとたちの いえに むかいました。
             


               とんとんとん とんとんとん
               おばあさんが とを たたきます。
               しらゆきひめは、まどから かおを のぞかせて いいました。
               「ごめんなさい。だれも いえに いれちゃ だめなの。」
               「かまわないよ。りんごが ひとつ あまったから、
                あんたに あげようかと おもってね。」
               と おばあさんが いうと、しらゆきひめは いいました。
               「いらないわ。なにも もらっちゃ だめなの。」
               「さては、どくりんごだと おもってるんだね? だいじょうぶだよ、
                二つに わって はんぶんは わたしが たべてみるからね。」
               そう いって、おばあさんは りんごの はんぶんを たべました。
             


               それを みた しらゆきひめは、あんしんして 
               のこりの はんぶんの りんごを もらいました。
               一くち たべると、しらゆきひめは、
               ばったりと たおれて しんでしまいました。
               りんごは、しらゆきひめの たべた はんぶんだけが、
               どくいり だったのです。
             

               わるい おきさきは おしろにかえると、
               かがみに むかって たずねました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「この くにで、一ばん うつくしいのは あなたです、おきさきさま。」
               おきさきは、たいへん よろこびました。
               
               ゆうがたになって、こびとたちが しごとから かえって くると、
               しらゆきひめが ゆかに たおれています。
               もう いきも していません。
               しらゆきひめは しんでしまったのです。
               
               こびとたちは、しらゆきひめを ガラスの ひつぎに 
               ねかせることにしました。あまりに うつくしいので、
               つちの なかに うめることなど できなかったのです。
               こびとたちは、ガラスの ひつぎを やまの うえまで はこぶと、
               ひつぎの まえで まいにち まいにち なきました。
             
               ある日、ひとりの おうじが もりの なかで みちに まよって、
               こびとたちの いえに とまることになりました。
               おうじは、山の うえで、ガラスの ひつぎの なかに よこたわる、
               うつくしい しらゆきひめを みつけて いいました。
               「あの ひつぎを ぼくに ゆずって くれないか?
                ほしいものは なんでも あげるから。」
               こびとたちは、こたえました。
               「せかいじゅうの きんを もらっても、さしあげられません。」
               それでも、おうじは、いっしょうけんめい たのみます。
               「しらゆきひめを みていないと、
                ぼくは もう いきて いけないんだ。ぼくの 一ばん だいじな
                たからものにして ずっと まもっていくから、
                どうか ぼくに ゆずって くれないか。」
               こびとたちは、おうじさまが そこまで だいじに してくれるのならと、
               ひつぎを わたすことに しました。
             

               おうじは、けらいたちに ひつぎを かつがせました。すると、
               ひとりの けらいが つまづいて、ひつぎが おおきく ゆれました。
               それと どうじに、どくりんごの かけらが 
               しらゆきひめの のどから、
               ころんと とびだしてきました。すると まもなく、
               しらゆきひめは めを さまし、
               ひつぎの ふたを あけて おきあがったのです。
               「あら? ここは どこ?」
               「し、しらゆきひめが いきかえった!」
               「やったー! しらゆきひめが いきかえったぞーっ!」
               こびとたちは おおよろこびです。
               おうじは、よろこび いっぱいで、
               しらゆきひめの てをとって いいました。
               「どうか、ぼくの つまに なってください。」
               しらゆきひめも、おうじを きにいり、
               ふたりは けっこんすることに なりました。
             





               わるい おきさきは いつものように かがみに むかって たずねました。
               「かがみよ かがみ。この くにで、一ばん うつくしいのは だれ?」
               すると、かがみは こたえました。
               「おきさきさま、ここでは あなたが 一ばん うつくしい。
                でも、こんどの わかい おきさきさまは、
                あなたの なんばいも うつくしい。」
               わかい おきさきさま とは、しらゆきひめの ことでした。
               いかりくるった わるい おきさきは、
               まほうの かがみを ちからいっぱい わりました。
               そのとたん、まほうは とびちり、われた かがみの かけらが 
               むねに ささって、わるい おきさきは しんでしまいました。
             






               おしろでは、おうじと しらゆきひめの けっこんしきが 
               はなやかに とりおこなわれました。
               
               しらゆきひめと おうじは、
               たすけあいながら いつまでも なかよく、
               しあわせに くらしました。
             
おしまい
しらゆきひめ(白雪姫) 文:カトウヒロ吉 絵:二木舞羽 作:グリム
 
       
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