あかずきん 文:カトウヒロ吉 絵:竹田朝子
むかしむかし、あるむらに、
小さな かわいい 女の子が いました。
女の子は とても かわいらしくて、
むらの だれもが ひとめ みるだけで すきに なりました。
とくに、女の子の おばあさんは、
女の子のことが かわいくて いとおしくて たまりません。
おばあさんは、女の子に あかい ずきんを あげました。
女の子も、おばあさんに もらった あかい ずきんが 大すきで、
いつも そればかり かぶっていたので、
女の子は みんなに
『あかずきんちゃん』と よばれるように なりました。
ある日、おかあさんが あかずきんに いいました。
「この おかしと ワインを もって、
おばあさんの いえに いってちょうだい。
おばあさんは びょうきだから、
これを たべて げんきになってもらうのよ。
さあ、いってらっしゃい。ぜったい よりみち しちゃだめよ。
おばあさんに あったら、ちゃんと あいさつしてね。」
「はーい、わかりました。」
あかずきんは おかあさんに やくそくして でかけました。
おばあさんの いえは、
あかずきんの むらから すこし はなれた
もりの なかにあります。
あかずきんが もりの なかに はいると、
やがて 一ぴきの 大きな オオカミに であいました。
あかずきんは、
オオカミが どんなに わるい けものか しらなかったので、
ぜんぜん こわく ありませんでした。
「こんにちは、あかずきんちゃん。」
「こんにちは、オオカミさん。」
「あかずきんちゃん、こんなに あさはやく どこに いくんだい?」
「おばあちゃんの おうちよ。」
「てに もっているものは なんだい?」
「おかしと ワインよ。
びょうきの おばあちゃんに たべてもらって、
げんきに なって もらうのよ。」
「ねえ、あかずきんちゃん、おばあさんは どこに すんでいるの?」
「この さきの、もりの なかよ。
三ぼんの 大きな カシの 木の したに おうちが あるの。」
オオカミは おもいました。
「なんて やわらかそうで うまそうな 女の子だろう。
これは ごちそうだ。
でも、うまく だませば、
おばあさんも たべることが できそうだぞ。」
オオカミは、あかずきんに いいました。
「あかずきんちゃん、みてごらんよ、きれいな はなが
いっぱい さいているよ。もっと まわりを みてみなよ。
ことりたちの きれいな さえずりも きいてみなよ。
もりの なかは こんなに たのしいよ。」
あかずきんは、かおを あげて あたりを みわたしました。
おひさまの ひかりが ふりそそぎ、
きれいな はなが あちらこちらに さいています。
「まあ、なんて きれいなの。
そうだ、おばあちゃんに おはなを いっぱい もっていったら、
きっと よろこぶわ。
まだ あさはやいから、ちょっとぐらい よりみちしても
おそくならないわ。」
あかずきんは、おかあさんとの やくそくを わすれて、
もりの なかで はなを つみはじめました。
きれいな はなを 一ぽん つむと、
それより きれいな はなが また みつかるので、
あかずきんは どんどん もりの おくふかくへと
はいって いってしまいました。
あかずきんが はなを つんでいるすきに、
オオカミは いそいで おばあさんの いえに むかいました。
トントントン。
オオカミは おばあさんの いえの ドアを たたきました。
「だれか きたのかい?」
なかから おばあさんの こえが したので、
オオカミは、いっしょうけんめい かわいい こえで いいました。
「わたし、あかずきんよ。おかしと ワインを もってきたの。」
「あいてるよ。じぶんで あけて、はやく はいって おいで。
わたしは よわっていて おきられないから。」
オオカミは ドアを あけると、
ベッドで ねている あばあさんに まっすぐに とびかかり、
おばあさんを ぺろりと ひとのみに してしまいました。
それから オオカミは、おばあさんの ふくを きて、
ぼうしを かぶって、ベッドに もぐりこみました。
こんどは、おばあさんの ふりをして
あかずきんを だまそうというのです。
あかずきんは、はなを あちこち さがして、
もちきれないほど たくさん あつめると、
ようやく ようじを おもいだして、
おばあさんの いえに やってきました。
「おはよう、おばあちゃん。」
あかずきんは おおきな こえで あいさつを しましたが、
おばあさんの へんじが ありません。
あかずきんが、おばあさんの ベッドの ところに いってみると、
おばあさんは ふとんで かおを かくして ねています。
あかずきんは、おばあさんに たずねました。
「あれれ?、おばあちゃん、なんて 大きな おみみなの!」
「おまえの こえが、よく きこえるようにだよ。」
おばあさんは、しわがれた へんな こえで こたえました。
「あれれ?、おばあちゃん、なんて 大きな めを しているの!」
「おまえの かおが よく みれるようにだよ。」
「あれれ?、おばあちゃん、なんて 大きな てなの!」
「おまえを しっかり だきしめる ためだよ。」
「だけど、おばあちゃん、
どうして そんなに おおきな くちを しているの?」
「それはね・・・」
「おまえを たべる ためだよ!」
そう さけぶと、おばあさんに ばけた オオカミは、
あかずきんを ぺろりと のみこんでしまいました。
おなかが ふくれた オオカミは、
そのまま ベッドに よこになって、
おおきな いびきを かきながら ねむってしまいました。
そこへ、ひとりの かりゅうどが とおりかかり、
おおきな いびきを ききつけました。
「おばあさん、とても 大きな いびきを かいているな。
からだが どこか わるいのかも しれないぞ。
ちょっと のぞいてみよう。」
かりゅうどが いえの なかに はいると、
おばあさんの ベッドには おおきな オオカミが ねていました。
「やっと みつけたぞ、この あくとうめ。」
かりゅうどは、てっぽうを かまえて
オオカミを うとうと しましたが、
おながが 大きいのをみて かんがえました。
「いや、まてよ。
こいつ、おばあさんを たべてしまったのかも しれない。
まだ たすけられるかも しれないぞ。」
かりゅうどは、
はさみで オオカミの おなかを きりひらきます。
じょき じょき じょき。
あかいずきんが すこし みえました。
じょき じょき じょき。
すると、オオカミの おなかから、女の子が とびだして きました。
「ああ、びっくりした。
オオカミの おなかの なかって まっくらなのね。」
あかずきんに つづいて、おばあさんが でてきました。
でも おばあさんは、かなり よわって ぐったりしていました。
あかずきんは、そとから 大きな いしを
たくさん もってきました。
この いしを、オオカミの おなかの なかに
つめようと いうのです。
三にんで いしを つめこんだあと、
オオカミの おなかを もとどおりに ぬいあわせました。
オオカミは めを さますと、
かりゅうどを みて にげだそうとしましたが、
おなかの いしが おもすぎて、
ばったり たおれて しんでしまいました。
三にんとも、あんしんして おおよろこびしました。
かりゅうどは、オオカミの けがわを はいで、もってかえりました。
おばあさんは、赤ずきんの もってきた おかしをたべて、
ワインをのむと、げんきに なりました。
あかずきんは おもいました。
「おかあさんの いうことは、まもらないと いけないわ。
もう よりみちなんて しないでおこう。」
おしまい
あかずきん 文:カトウヒロ吉 絵:竹田朝子